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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のリハビリが難しい理由、理学療法士が解説します

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、呼吸器症状や肺炎がクローズアップされており、連日感染者数や重症者数が報道されています。
重症化する高齢者も多いなか、医療機関では急性期からリハビリが行われています。
COVID-19で入院した場合、どんなリハビリを行っているのか、どういう点が難しいのかについて、現役の理学療法士が解説します。

コロナウイルス感染症(COVID-19)のリハビリを解説

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、実は全身の病気?

呼吸器症状だけではなくさまざまな臓器障害も併発している可能性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、肺炎による呼吸器症状が問題視されていますが、実はそのほかにもさまざまな症状が出現します。

●肺炎だけじゃない?実はほかの臓器にも影響を与える

新型コロナウイルスと聞くと、「重症な肺炎」というイメージを持っている方も多いと思いますが、肺炎はあくまでも感染症症状の1つです。
感染による初期症状として、嗅覚障害や味覚障害が挙げられますが、息苦しさなどの呼吸器症状も出やすい症状の1つです。
その理由を簡単に説明すると、重症な呼吸器症状をきたすコロナウイルスが、わたしたちの正常な細胞に付着するためには受け皿が必要になります。
この受け皿は、ACE2受容体と呼ばれており、鼻の粘膜や肺、心臓や腎臓、消化器、血管の内皮細胞など体のさまざまな部分に存在します。
そのため、最初は嗅覚や息苦しさなどの症状だけでも、ウイルスが増殖する臓器に応じた症状が出現します。
たとえば、血管内皮で炎症が起こると血栓(血のかたまり)が形成され、脳や心臓の血管が詰まったり、出血傾向になるなど重篤な症状を引き起こします。
また、心臓での炎症によって心臓の収縮力が低下したり、不整脈が出現することによって心不全の状態になることもあります。
つまり、COVID-19では肺炎だけでなくさまざまな臓器障害に注意する必要があります。

●COVID-19の重症化では急激な筋力低下が起こる

前述したように、COVID-19では肺や心臓などさまざまな臓器に影響を与えますが、神経や筋肉も例外ではありません。
あまりなじみのないワードかもしれませんが、COVID-19や重症感染症でICUに入室した方で、ICU-AW(ICU関連筋力低下)という病態があります。
ICU-AWは、治療のための鎮静や筋弛緩、ステロイドの使用などさまざまな要因で引き起こされます。
具体的な症状としては、筋肉が痩せたわけではないのに、急速に進行する全身の筋力低下が特徴です。
手足の筋力だけでなく、食事の飲み込みに関係する頸部筋、呼吸に関係する横隔膜など、全身の筋力が低下します。
また、いったんICU-AWを発症すると、回復に長期間を要することが多く、理学療法士の立場としては早期介入による予防を常に心がけています。

新型コロナウイルスの治療と急性期から退院後までのリハビリ。オージー技研がおすすめするリハビリ機器の適応についてもご紹介します。

重症化とはどういう状態?早期リハビリでできること

急激に悪化することもあるため呼吸状態は注意深く観察する

よくテレビの報道で「重症者数」や「重症化」というワードを目にすると思いますが、重症とは具体的にどのような状態を指すのでしょうか。

●重症度がクラス分けされている

2020年に厚生労働省が作成した「新型コロナウイルスCOVID-19診療の手引き」では、以下のような重症度分類が記載されています。

酸素飽和度 臨床状態
軽症 SpO2 ≧96% 呼吸器症状なし 咳のみ
中等症Ⅰ(呼吸不全なし) 93%<SpO2<96% 息切れ 肺炎所見
中等症Ⅱ(呼吸不全あり) SpO2≦93% 酸素投与が必要
重症 人工呼吸器が必要 ICUへ入室

また、自治体によっては独自の基準を設けているところもありますが、おおむね共通しているのは人工呼吸器が必要=重症という点です。
つまり、ニュースなどで重症者と報道されている場合、人工呼吸器管理やICUでの治療を要していると判断できます。
しかし、軽症や中等症であっても急激に状態が悪くなるケースもあるため、完全に症状がなくなるまで油断できないのが怖いところです。
また、前述したほかの臓器の症状に関しては、重症化すると他臓器の障害も出やすくなるため、「肺が良くなったらICUから出られる」というわけではありません。
つまり、COVID-19における重症とは、肺の状態が悪く、かつ全身の臓器障害が出現しやすい危険な状態であると認識しておくとよいでしょう。

●ICU入室後はできるだけ早くリハビリを開始する

前述した通り、COVID-19の重症者では全身の臓器にさまざまな障害が出現するため、ICUでの集中治療が必要になります。
しかし、ICU-AWの予防や呼吸状態の改善のためには、早期からのリハビリが重要になってきます。
具体的には、手足の関節が固まらないような関節可動域訓練、手足の筋力トレーニング、起きる練習や座る練習などを行っています
「感染する可能性があるのに?」と心配する方もいますが、もちろんリハビリスタッフも防護服の着用など感染予防を徹底した上で患者さんと接しています。
また、多くの病院では関わるリハビリスタッフを限定(またはチーム化)しており、一般病棟への感染拡大防止に努めています。
しかし、一般的に周知されている早期リハビリとは異なり、COVID-19ではさまざまな障害が立ちはだかります。

理学療法士が語る、COVID-19のリハビリが難しい理由

ICU-acquired weakness(ICU-AW)ICU在室中に生じる急性のびまん性筋力低下に注意

現在判明しているCOVID-19の病態や、筆者の臨床経験などから、COVID-19のリハビリが難しい理由について解説したいと思います。

●呼吸の状態が不安定で、なかなか離床ができない

COVID-19肺炎では、重症化すると人工呼吸器を装着する必要があり、多くの場合はICUへ入ることになります。
人工呼吸器装着中は、肺を休めるために眠たくなる薬(鎮静剤)を使用する反面、体が弱らないように起きる練習も必要になります。
しかし、いったん落ち着いたように思えても、急に肺の状態が悪化することもあり、必ずしも毎日少しずつリハビリが進むというわけではありません
また、肺炎の影響で肺が線維化(肺が硬くなる)することもあり、酸素の量や呼吸器の圧力を減らすことが難しいケースもあります。
リハビリを頑張りすぎた結果、体の酸素量が不足して全身状態が悪化する可能性もあるため、離床は慎重に進める必要があります。

●ICU-AWでは筋力の回復に時間がかかる

前述したように、ICU-AWを発症した場合は手脚の主要な筋肉の力が著明に低下するため、自分で寝返る動作さえも難しくなります。
加えて、COVID-19では肺炎をはじめ、下痢などの消化器症状などさまざまな症状が出現するため、体の栄養状態も悪くなります
神経障害によって筋肉の力が入らないこと、全身の炎症でタンパク質が少なくなることにより、筋力が大きく低下します。
肺の状態が悪くて頑張れない、栄養状態の悪化でトレーニング効果が十分に得られないことなどから、重症化したCOVID-19の筋力回復には時間を要します

●消化管の出血や脳梗塞のリスクがある

呼吸状態が悪くて無理に動かせない、極端な筋力低下のため回復に時間を要するなどの理由で、COVID-19のリハビリには時間がかかります。
しかし、筋力や呼吸以外でも、リハビリがうまく進まない理由があります。
COVID-19ではコロナウイルスが消化器や血管細胞などにも入り込むため、血栓ができやすい、出血をしやすい状態になることがあります。
いくらリハビリが順調に進んでいても、急な出血が原因で絶対安静となったり、脳梗塞を起こしたりする可能性があります
また、血栓が肺の血管に詰まることで(肺塞栓)、一気に呼吸状態が悪くなるケースもあるため、凝固機能(血を固める能力)にも注意しておく必要があります

COVID-19では長期的なリハビリが必要

COVID-19は、肺炎だけでなく全身の臓器に炎症を起こす可能性があり、病態や障害をとらえることが難しくなります。
急性期でのリハビリにおいては、早期離床の必要性を感じながらも、あまり積極的にリハビリを進められないというジレンマがあります。
結果的に、さまざまな臓器障害や全身の筋力低下による影響で、重症の方では入院から退院後まで長期にわたるリハビリが必要になります。
しかし、病気と戦っている患者さんのためにも、われわれ医療従事者は新たな知見や研究結果を参考にしながら、これからも臨床現場で共に戦っていきたいと思います。

参考:
厚生労働省:新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第4.1版(2021年3月15日引用)

  • 執筆者

    奥村 高弘

  • 皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
    急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
    高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。

    保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士

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