リハビリの助手って大変なの?仕事内容や必要な資質についてご紹介します
病院や介護施設で働く職種として、看護師や介護福祉士、理学療法士や作業療法士などさまざまな専門職が挙げられます。
しかし、すべてのスタッフが国家資格を持っているわけではなく、専門職の補助として働いている方も多いです。
本記事では、リハビリ助手の業務内容や働くメリットなどについてご紹介します。
リハビリ助手はどんな仕事をするの?
まず最初に、リハビリ助手の仕事内容についてご紹介します。
●リハビリで使用する機器の準備や後片付け
リハビリ室には、歩行練習を行う平行棒や歩行器などをはじめ、バランス訓練、筋力トレーニング機器などさまざまな機械器具があります。
なかでも、温熱療法で代表的なホットパック、疼痛緩和のための低周波治療機器などは、クリニックや病院など多くの場所で活用されているでしょう。
リハビリ助手さんは、機器のセッティングや後片付けなどを依頼されることも多いため、基本的な使用方法については知っておく必要があります。
また、昨今では感染予防対策が徹底されているため、使用後のリハビリ機器や道具を滅菌または消毒する必要があります。
リハビリ助手さんには、患者さんのリハビリがスムーズに行えるよう、清潔で安心できる環境を整えておくことが求められます。
●臨床場面におけるリハビリ専門職のサポート
もう1つの重要な業務として、セラピストが行うリハビリを直接的にサポートすることが挙げられます。
たとえば、歩行練習中に介助者の1人としてサポートする、座位練習を横で支えるなど、その時々に応じた内容になります。
ただし、セラピストが監視していない状況でこれらの行為をしたり、「低周波当てといて〜」と言われたからといって、助手1人で行ったりするのはNGです。
あくまでもセラピストが治療する内容のサポートであり、リハビリ助手が医療行為を独断ですることはあり得ません。
●リハビリ予約や書類整理などの事務作業
前述したような臨床場面以外でも、患者さんのリハビリ予約をとったり、リハビリ関係の書類整理などの事務作業も大切な業務です。
また、リハビリに関する書類を作成(おおまかな部分だけ)したり、病棟や外部からの連絡を担当セラピストに伝えたりと、窓口業務も大切な仕事です。
複数の助手さんがいる病院の場合、業務担当が決められていることもありますが、1人だけの場合は臨床から事務作業まで、複数の業務を担当することになるでしょう。
リハビリ助手に求められる資格やスキルとは?
「リハビリ助手として働きたい」と考えた場合、どんな人が向いているのか、特別な資格が必要なのかは気になるところでしょう。
●話すことが好き、人に喜ばれる仕事がしたい人ならOK
リハビリ助手が勤務する職場としては、クリニックや病院、老人保健施設など高齢者が多い施設であることが多いです。
そのため、人と関わっている時間が大半であり、ある程度のコミュニケーションスキルが求められます。
ただ、医療者の問診とは違い、世間話で雰囲気を和ませる、相手の話を傾聴するなどができれば十分であり、特殊なスキルは必要ありません。
「人と話すことが好き」という方は、もうその時点で向いている仕事かもしれません。
また、患者さんが日に日に良くなっていく姿や喜ぶ姿をそばで見ることができるので、「人のためになる仕事がしたい」と思っている方にも向いていますね。
●特別な資格はいらない、医療や介護に関する知識がなくても大丈夫
リハビリ助手として働く場合、ヘルパー2級(現在は介護職員初任者研修に相当)など介護に関係する資格が必要と思われるかもしれません。
しかし、法的には無資格でも特に問題なく、また資格を持っているから優遇されるということもほとんどありません。
「病気や障害のことはほとんどわからない」と不安になるかもしれませんが、実際は働きながら学ぶことができるので心配ありません。
また、介助の技術などもリハビリ専門職が指導してくれるので、医療や介護分野で働いた経験がなくても大丈夫です。
●腰痛などで体を壊すことはある?
介護分野では、持病の腰痛などで退職を余儀なくされたりする方もいますが、リハビリ助手の場合も車いす移乗の介助など身体的な負担はあります。
しかし、リハビリ助手の場合、リハビリ専門職という動作介助のスペシャリストが側についているため、介助方法やコツなどを教わることができます。
また、万が一腰痛など身体の異常が生じたとしても、適切なストレッチやトレーニング方法を学ぶことができるため安心です。
「自分は体が小さいから、力がないから」と悩む必要はなく、むしろ力がなくてもできる介助方法を習得することができるでしょう。
リハビリ助手として働くメリットは?
さいごに、リハビリ助手として働くメリットや、将来性について考えてみたいと思います。
●適切な介助方法を習得することができる
身体介助のスペシャリストと一緒に働くことができるため、適切な介助方法や注意すべきポイントなどを学ぶことができます。
たとえば、立ち上がり動作の際は無理に引っ張るのではなく重心移動をサポートする、車いす移乗の際は福祉用具を導入すると楽にできるなどが挙げられるでしょう。
特に、福祉用具に関しては、普通に生活していると見る機会もなく、「こんな便利なものがあるんだ」と気づくことも多いです。
それらの知識や技術は、仕事だけでなく家族に介護が必要となった際にも生かすことができるので、働くメリットとしては大きいと思います。
●医療や介護について学ぶことができる
クリニックや病院など職場にかかわらず、リハビリ助手として働く周りには多くの医療スタッフがいます。
病気や治療など医学的な内容をはじめ、疾病予防のために普段の生活で気をつけるべき点など、多くのことを学ぶことができます。
また、はじめはリハビリに対して漠然としたイメージしか持てなかったとしても、働くなかで仕事に魅力ややりがいを感じることができます。
筆者の知り合いの1人に、助手として働きながら養成校に通いはじめ、苦労の末に作業療法士免許を取得された方もおられます。
●リハビリ助手の将来性は?
リハビリ助手は、無資格未経験でも働くことはできますが、専門家としての国家資格は存在しないため、将来性に不安を覚える方もいるでしょう。
家計のサポートとして仕事をする、働く期間が決まっている方などはいいですが、年収アップや出世などを考えた場合、残念ながら厳しい現状です。
自身のキャリアアップを考えるのであれば、リハビリ専門職の免許取得以外にも、以下のような例が挙げられます。
- ◯リハビリ助手として働きながら、医療や介護に関する知識を学ぶ
- ◯介護職員初任者研修を修了する
- ◯介護施設などで介護スタッフとして3年間勤務する
- ◯介護職員実務者研修を修了する
- ◯介護福祉士の国家資格を習得する
- ◯介護福祉士として働き、将来的にケアマネジャーの資格を習得する
理学療法士から未来のリハビリ助手さんへひとこと
超高齢社会の到来とともに、医療や介護現場におけるリハビリのニーズも高まってきました。
リハビリの仕事は、患者さんの身体機能や動作能力を改善させるだけでなく、生活を支えるという大きな目標があります。
正しい知識や適切な介助技術を知る、患者さんの生活に寄り添ったサポートができるなど、リハビリ助手は非常にやりがいのある仕事です。
医療や介護分野の仕事に興味がある、誰かを助ける仕事をしたいという方は、リハビリ助手として働いてみてはいかがでしょうか。
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執筆者
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皆さん、こんにちは。理学療法士の奥村と申します。
急性期病院での経験(心臓リハビリテーション ICU専従セラピスト リハビリ・介護スタッフを対象とした研修会の主催等)を生かし、医療と介護の両方の視点から、わかりやすい記事をお届けできるように心がけています。
高齢者問題について、一人ひとりが当事者意識を持って考えられる世の中になればいいなと思っています。
保有資格:認定理学療法士(循環) 心臓リハビリテーション指導士 3学会合同呼吸療法認定士