有痛性外脛骨の痛みの原因は、ここにあった!オススメの対処法をご紹介します
有痛性外脛骨(ゆうつうせいがいけいこつ)と診断された場合、患部に湿布を貼って安静にすることや、負担がかからないようにインソールを処方することが一般的な治療になります。
しかし、それでもなかなか痛みが取れない場合は筋肉の硬さが影響している可能性があります。
原因として考えられることと、オススメの対処法についてご紹介します。
有痛性外脛骨とは?
そもそも外脛骨とは、足の内側アーチを構成する骨の一つである舟状骨(しゅうじょうこつ)の隣に、過剰骨と呼ばれる本来あるはずのない余分な骨ができる状態をいいます。
痛みがある場合は、有痛性外脛骨、痛みがない場合は無痛性外脛骨となります。
つまり有痛性外脛骨とは、足の内側アーチが過剰骨によって飛び出るようにふくらみ、その部位に痛みを伴っている状態です。
原因や医療機関での診断方法について、簡単にご紹介します。
●外脛骨の原因は、骨の成長過程にある
この外脛骨ができてしまう原因は、骨の成長過程にあります。
生まれたての赤ちゃんの頃は大人のように骨同士がくっついておらず、軟骨細胞が豊富に存在します。
これがいわゆる成長軟骨と呼ばれるもので、軟骨が成長に合わせて少しずつ骨となり、最終的には1つの骨となります。
外脛骨はこの成長過程で本来1つの骨になるはずだったものが何らかの原因でくっつかない、あるいは中途半端にくっついた状態になります。
●有痛性外脛骨になりやすい年齢と性別
有痛性外脛骨の多くは、スポーツをしている学生に多く認められる病気になります。
特に、陸上やサッカー、バスケットボールなどよく走る競技で多い傾向にあります。
また、男女比でいうと女性のほうが痛みに悩まされやすい傾向にあります。
幼少期のみならず、大人になってから痛みが出てくることも少なくありません。
大人になってから出てくる痛みは、外脛骨部に繰り返される摩擦の力が原因となります。
たとえば女性のヒールのような踵(かかと)の高い靴は、足の前側に体重がかかりやすく、外脛骨部に対して圧迫される力が強くかかることがあります。
また、普段からきつめの靴を履くことが多い人も、外からの圧迫が加わりやすく痛みの原因となる可能性があります。
有痛性外脛骨の方は、少しゆとりのあるスニーカーやパンプスなど、外脛骨部に圧迫が強く加わらないようなものを選ぶことをオススメします。
●有痛性外脛骨になりやすい足の形
扁平足の方は痛みが出やすい傾向にあります。
これは、扁平足になると足の内側アーチが沈み込むような形になり、外脛骨部に圧迫や伸張されるなどのストレスが加わりやすくなるためです。
また、アーチが沈むことによって、外脛骨にくっつく後脛骨筋(こうけいこつきん)の腱が伸張され、通常よりも引っ張られる力が強くかかってしまいます。
このため、足の形をよく確認することも重要です。
●診断はレントゲン撮影と視診・触診
有痛性外脛骨の診断は、整形外科でのレントゲン撮影が中心になります。
レントゲンを撮影したときに、舟状骨の内側に外脛骨が認められます。
外脛骨はVeitch分類によってTypeⅠ、TypeⅡ、TypeⅢの3タイプに分類され、痛みが一番出やすいのがTypeⅡになります。
まとめると、以下の表のようになります。
TypeⅠ | 外脛骨が小さく舟状骨から分離して後脛骨筋(こうけいこつきん)の中に含まれる。 |
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TypeⅡ | 大きくて舟状骨粗面と線維性または線維軟骨性に結合して後脛骨筋の付着部の一部となる。 |
TypeⅢ | 舟状骨と骨性癒合して外脛骨は突起状となる。 |
TypeⅡで痛みが出やすい原因は、骨と後脛骨筋のくっつく場所が軟骨を介しており、捻挫や繰り返される負荷で軟骨に亀裂が入りやすい状態であるためです。
また、完全に骨化していたとしても外脛骨が大きく飛び出ている場合は周りの組織を圧迫してしまい、それによって痛みが出てしまうこともあります。
このため、レントゲンを撮影して外脛骨がくっついているかどうかを把握する必要があります。
また、外脛骨の場所が赤く腫れていることや、押すと痛みがあるなど外脛骨部が炎症しているかどうかも診断の基準となります。
スポーツをするときや押して痛みがある場合には医療機関を受診し、レントゲンを撮影してもらい、状態を確認してもらうことをオススメします。
痛みの原因は、筋肉の硬さにあった!
有痛性外脛骨の痛みは、後脛骨筋(こうけいこつきん)に由来するものと、ほかのふくらはぎの筋肉が影響しています。
●後脛骨筋の影響
有痛性外脛骨の痛みの多くは、後脛骨筋が深く関わってきます。
後脛骨筋は、脛骨と呼ばれる脛の骨の深いところにあり、舟状骨に付着します。
後脛骨筋が硬くなってしまうと、腱を引く力が強くかかり、舟状骨にできた外脛骨へくっつく場所に剥離(はくり)するようなストレスが加わります。
その結果、外脛骨部に炎症がおき、腫れて痛みを伴ってしまうのです。
このため、後脛骨筋の柔軟性を改善することで、痛みの改善が期待できます。
また、後脛骨筋は足のアーチを支えるためにとても重要な筋肉です。
複数の骨で構成された足のアーチを、後脛骨筋などが崩れないように支えてくれています。
後脛骨筋が硬くなることや弱くなってしまうと、アーチを支える機能がどんどん低下し、扁平足のような状態になってしまいます。
この結果、足が疲れやすくなることや、外脛骨部に圧迫刺激が加わりやすくなることで、痛みにつながります。
このため、後脛骨筋がきちんと機能しているかどうかが治療をすすめる上で、とても重要になります。
硬くなっている後脛骨筋に対し、ストレッチをすればよいかというと、そうではありません。
外脛骨部に炎症が起きている場合、無理にストレッチをすると外脛骨部に引っ張る力が加わり、余計に炎症を引き起こしてしまいます。
このため、外脛骨部を押して痛みがある場合や、赤く腫れがある場合は無理にストレッチをせず後述する圧迫体操を試すようにしてみてください。
●その他の筋肉の影響
この後脛骨筋は、ふくらはぎの筋肉の中で深い場所に存在しています。
ふくらはぎの筋肉は、ミルフィーユのように層構造になっています。
表面にある筋肉が硬くなるとその下の層にある筋肉まで圧迫がかかり、その結果後脛骨筋まで硬くなってしまいます。
そのため、後脛骨筋だけではなく、表面にある腓腹筋(ひふくきん)やヒラメ筋などの柔軟性を改善することで、痛みの改善につながることがあります。
腓腹筋やヒラメ筋は、足のむくみにも影響してきます。
オススメの対処法はこれ!
外脛骨に対するオススメの体操として、後脛骨筋をほぐす体操と、ふくらはぎの筋肉をほぐす体操の2つがあります。
●後脛骨筋をほぐす体操
後脛骨筋は、ふくらはぎの筋肉の中でも一番深いところに位置します。
このため、直接筋肉にふれることはできないのですが、後脛骨筋の腱は内くるぶしのすぐ後ろを通過するため、この場所で触ることができます。
- 1)椅子に浅く座り、ほぐす側の足をあぐらをかくようにして座ります。
- 2)内くるぶしの一番尖ったところから指一本分アキレス腱側を触り、コリコリした腱を見つけます。
- 3)腱を軽く圧迫したまま、足首を軽くパタパタさせます。
このときに、目一杯力を入れてしまうとほかの筋肉が働いてしまうため、軽く行うことが重要です。
1日に足首をパタパタする動作を10回1セットとして、3セットを目安に実施します。
このとき、痛みが残る場合には注意が必要です。
必ず痛みが残らない範囲で実施することをオススメします。
●ふくらはぎの筋肉をほぐす体操
ほぐす前の効果判定として、ふくらはぎ全体を触り筋肉のこわばり具合を確認します。
- 1)椅子に浅く座り、ほぐす側のふくらはぎが反対足の膝頭にあたるように足を組みます。
このとき、足を手で支えて安定させます。 - 2)手で膝頭に押しつけるように圧迫し、痛い場所を探します。
- 3)痛気持ち良い程度の圧をかけたまま、つま先をパタパタ上げ下げします。
- 4)痛みがなじんできたら、ほかに押して痛い場所がないか探します。
この工程を時間の許す範囲で続けます。
筋肉の硬さが強い場合は、揉み返しのような痛みが翌日に出ることがあります。
筋肉の硬さを改善するには必要な工程ですが、痛みがあるうちは無理せず、揉み返しが落ちついたらまた体操を再開するようにしてください。
長引く痛みには要注意!
痛みが長期間続いている場合には、外脛骨に異常な血管が増殖している可能性があります。
これは、慢性的に微細な炎症が続くことによって、患部に防御性の反応が生じているためです。
こうした状態の場合、いくら筋肉をほぐす体操をしても改善が得られにくいことが考えられます。
このため、痛みが年単位で経過している場合には、必ず医療機関を受診し、患部の状態を確認してもらうことをオススメします。
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執筆者
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理学療法士として、整形外科に勤務する傍ら、執筆活動をしています。
一般的な整形分野から、栄養指導、スポーツ競技毎の怪我の特性や、障害予防、 自宅でできる簡単なエクササイズの方法などの記事を書くのが得意です。
仕事柄、介護部門との関連も多く、介護の方法を自分が指導することもあります。
保有資格等:理学療法士、福祉住環境コーディネーター2級