在宅介護やリハビリなど健康をとり戻す生活に役立つ情報を。

  • Facebook

健康応援 OGスマイル

この記事に関するタグ

人工膝関節手術のリハビリってなにをするの?自宅復帰までの流れを解説!

変形性膝関節症の治療法として、「人工膝関節手術」という選択肢があります。
その名の通り、傷んでいる膝の骨を切り取り人工の膝関節に置き換える手術です。
膝の手術というと「膝の痛みはなくなるの?」「歩行は可能になるの?」「曲がる範囲は広がるの?」と、いろいろな疑問が湧いてくるかもしれません。
ここでは、人工膝関節の特徴から自宅復帰に向けての術後のリハビリの流れまでを解説していきます。

人工関節のメリット、デメリットを知ろう!

人工関節にも、メリットとデメリットがあります。
メスを入れるので手術による傷や出血などの刺激はもちろん、術後の痛みもあります。また、人工の関節になるので膝を曲げられる範囲(可動範囲)には、制限が残る場合もあります。
しかし、普段の生活のなかでたびたび悩まされてきた荷重時痛(体重をかけたときの痛み)は、改善することが多いです。
まずはそうした「人工関節をいれることの利点や難点」について把握していきましょう。

●人工関節のメリット

1)痛い人には有り難い!荷重時痛は劇的に改善

人工膝関節の最大のメリットは荷重時痛の軽減になります。
歩いたり立ったりすると激痛が走り、日常生活に支障をきたしていた方にとっては、大きなメリットです。
しかし手術によるダメージによって、術後は患部の痛みや膝の曲げ伸ばしなどで痛みが出現することが多く、痛みが完全になくなるわけではないことを理解しておきましょう。
あくまでも人工膝関節の目的は「荷重したときの痛み」を改善することなのです。

2)歩きやすい

荷重したときの痛みが軽減するため、歩いたり立ったりすることは非常に楽になります。
歩行スピードや歩き方も改善され、つえなしでの歩行も可能になります。
旅行や買い物などの外出も、楽に感じられるようになるでしょう。
階段や段差の昇降も比較的楽に行えるようになるため、QOL(生活の質)も向上します。

3)O脚の改善

人工関節の手術をされる方は、かなり進行した変形性膝関節症のためO脚が進行している方も多いですが、手術によってこれが改善され、足をまっすぐに伸ばすことができるようになります。
見た目にもよくなるため、O脚を気にされていた方にとっては、とても嬉しい効果といえるでしょう。

●人工関節のデメリット

1)膝の可動域(動かせる範囲)が制限される人も!

手術まえに膝の可動域に制限があった方はもちろん、可動域が良好で正座ができていた方でも、経過によっては膝の可動域が制限される場合があります。
人工関節にはさまざまな種類があり、どのタイプが適しているのか医師が考えながら手術を行います。
最近では深屈曲対応型という人工膝関節も出てきており、以前よりも膝の可動域は拡大してきていますが、必ずしも曲がるというわけではなく、特に正座は難しい動作の一つです。
筆者が担当した患者さんに、日本舞踊をされている方がいらっしゃいました。
日本舞踊は正座やしゃがみ込みなど、膝を深く曲げる姿勢や動作が非常に多いため、人工関節の手術をするかどうか非常に悩んでいました。
結局、この方は手術を選択せずに保存療法を行い、今でも日本舞踊を続けています。
膝の可動域はその後の生活に大きな影響を与えます。
可動域が良好な方もいれば、制限が残る方もいるため、もし残ったときのことも考えて検討していく必要があるでしょう。

2)関節のゆるみ

人工関節の手術をしたあとに何年も動かしていると、固定している人工関節がゆるんできてしまうことがあります。
日常生活にはあまり影響はありませんが、ゆるみが生じたまま放置していると人工関節が壊れてしまう可能性がでてきます。

3)耐用年数

人工関節にすれば一生大丈夫というわけではなく、人工物になるのでやはり耐用年数があります。
そうなると再置換術といって、人工関節を入れ替える手術が必要になってきます。
以前は、人工関節の耐用年数は10~15年といわれていましたが、徐々に伸びてきており、必ずしもすべての方が再置換術をうけるわけではありません。
筆者もPTとして働きだして12年目になりますが、再置換術を経験したことは1度もないため、過剰に心配する必要はないでしょう。

膝の可動域と筋力!まずはリハビリでこの2つを頑張ろう

膝の機能を高めるという点では、膝の可動域と筋力は欠かせません。
できる限り、膝が動く範囲を広くすることは、よりよい生活を送るためにも必要なことです。

●まずは可動域!膝の動きが今後の生活のしやすさを左右する

歩き方などにこだわらずに、「歩く」ことだけを考えると、膝の可動域はあまり重視されることはありません。
しかし、いざ自宅で生活していくとなると可動域によって生活の様相は変わってきてしまうため、筆者は特に可動域は重要視しています。
イスやテーブルといった洋式の生活を獲得するには、120~130°前後の可動域が必要となってくるため、まずはそこをリハビリの目標として挙げています。
ただ、膝の角度が手術をするまえから目標より曲がっていない方は、達成することが難しい場合もあります。

●歩けるようになるために!下肢全体の筋力アップ!

人工関節の手術をする方は膝周囲だけでなく、下肢全体の筋力が低下しています。
そのため膝周囲の筋力はもちろん、股関節、お尻周りにある筋肉(殿筋)の筋力トレーニングを行っていきます。
ここで重要なのは、ただ筋力をつければいいというわけではなく、歩行などの動作のなかで「いかにその筋力を使えるようにしていくか」ということです。
つまり重り上げなどの筋力トレーニングだけでなく、実際の動作を意識したトレーニングをしていくことがQOLを高めるためには重要です。
リハビリ場面でも実際の動作を練習することがあると思いますが、ぜひ日常を意識して積極的に取り組んでみてください。

ポイントは歩行と日常生活動作!家に帰るための確認を

痛みがなくなるぶん、歩行などは術前よりもスムーズに行えるようになってきます。
しかし膝の動く角度によっては、家で生活するときに工夫が必要な場合があります。

●どんどん歩行練習を

人工関節の術後は特に荷重制限はなく、術後早期より歩くことも許可されています。
術後の痛みや全身状態にも影響されますが、できるだけ早くから歩行補助具を使用しての歩行練習を開始します。
これは、早期からの歩行練習が歩行能力の向上につながるためです。

●帰るまえに最終確認!家で生活できそう!?

さあもうすぐ退院!となったら実際に家に帰ったときのことを想定してみましょう。
膝の動く範囲が問題なければ普通にできる動作でも、制限されている場合は浴槽の出入りや床へのしゃがみ込み、靴下の着脱や高い段差の昇降、自転車の乗り降りなどにも影響がでてきます。
しかしそうした場合でも、対策がないわけではありません。
たとえば自転車なら、バランスが悪くならない程度にサドルの高さを調節する。
段差をのぼるときは、手術していない足からのぼるようにするなど、なるべく膝が曲がらないよう工夫することで、動作がしやすくなる場合もあります。
担当の理学療法士にしっかりと相談して、自宅に復帰してから困らないようにしておきましょう。

●人工関節を長持ちさせるために気をつけたい5つのポイント

人工関節を少しでも長持ちさせるためには、日々の心がけが大事です。

  1. 1)体重コントロール!体重アップは避けよう
  2. 2)外出時はつえなど歩行補助具の使用を
  3. 3)激しい運動はゆるみや破損につながりやすい
  4. 4)もちろん転倒はダメ
  5. 5)重たい物はなるべく持たないように!

いくつか例を挙げましたが、共通していえることは、膝に負担をかけないように意識しながら過ごすことです。
また、こうした過ごし方を心がけておくことで、人工関節を長持ちさせることにもつながるでしょう。

まとめ

今回は人工膝関節の特徴とその後のリハビリについて述べてきました。
人工関節にはメリットばかりでなくデメリットもありますが、耐用年数も長くなってきており痛みの改善には大きな効果がある手術です。
その方の考え方や生活習慣にもよりますが、痛くてなかなか歩けない状態を我慢して過ごすのか、膝の可動域制限といった可能性があっても、痛みから解放される毎日を送るのか、今現在「痛み」に悩まされている方は検討してみてはいかがでしょうか。

コメントをどうぞ

ご入力いただいた名前・コメント内容は弊社がコメント返信する際に公開されます。
また、個別の治療方針や転院に関するご相談にはお答えいたしかねます。ご了承ください。
メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)