在宅介護やリハビリなど健康をとり戻す生活に役立つ情報を。

  • Facebook

健康応援 OGスマイル

この記事に関するタグ

しびれ・麻痺

加齢により神経の通り道が狭くなり、足のしびれや痛みのある脊柱管狭窄症は治るのか?治療法と自宅でもできる対策を徹底解説

高齢化が進むなか、脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)は増加の一途をたどっており、今後もさらに増加するといわれています。
脊柱管狭窄症になると日常生活のさまざまな動作が行いにくくなってしまい、生活の質にも影響がでてきます。
脊柱管狭窄症は治るのか…今回は脊柱管狭窄症の概要と治療法、自宅でもできる対策を解説していきます。

脊柱管狭窄症ってどんな病気?原因と症状を解説!

腰部脊柱管狭窄症診療ガイドラインによると、脊柱管狭窄症は現在のところその成因や病理学的な変化は完全には解明されていないのですが「腰椎部の脊柱管あるいは椎間孔(ついかんこう)の狭小化により神経組織の障害あるいは血流の障害が生じ、症状を呈する」と考えられています。
つまり、腰にある骨の内部が狭くなり、神経や血流に影響が生じることが原因といわれているのです。
次に、具体的な原因や症状についてお伝えしていきます。

●狭窄による神経の圧迫の原因は加齢による影響が最も多い!

脊柱管狭窄症は、脊柱管と呼ばれる神経の通り道が狭くなり、神経が圧迫されることで引き起こされます。
圧迫される原因は先天性のものもありますが、ほとんどは後天性のものです。

1)加齢による組織の変化

加齢に伴い、脊柱管をつくっている骨が変形したり、じん帯が厚くなるといった要因から、脊柱管が狭くなって神経を圧迫します。
こうした加齢による影響が、最も多い原因とされています。

2)すべり症や椎間板ヘルニアなど疾患によるもの

腰の疾患でも脊柱管が狭くなるものがあり、その代表的なものが「椎間板ヘルニア」と「腰椎すべり症」です。
椎間板ヘルニアはご存じの方も多いので割愛しますが、腰椎すべり症は、慢性的に腰椎が前方にすべっている(ゆがんでいる)状態のことをいいます。
これらの疾患になっても脊柱管が狭くなる原因になります。

●特徴は間欠性跛行(かんけつせいはこう)!ほかにもしびれや痛みが出現

脊柱管狭窄症の一番の特徴は、間欠性跛行(かんけつせいはこう)になります。
ほかにも足のしびれや痛み、腰痛が生じます。

1)間欠性跛行(かんけつせいはこう)

間欠性跛行とは数分間歩くと足に痛みやしびれが生じ、休憩すると症状が消えて再び歩くことができる状態のことをいいます。
連続して歩ける時間は症状によってまちまちですが、休憩するときは腰を丸めると一気に楽になります。

2)足のしびれ、痛み

神経が圧迫されるため、足にしびれや痛みが出現します。
圧迫される神経によって、どのような症状がでるかはさまざまです。
筆者が経験した患者さんでは、腰痛だけの方や腰からお尻にかけて痛みがあった方、つま先までしびれがある方もいらっしゃいました。

3)筋力低下

間欠性跛行になると動く量が減少するため、足の筋力低下が起こってきます。
また圧迫が重度だと神経圧迫による筋力低下も起こり、実際は両者が混在しています。

4)ぼうこう直腸障害

圧迫が重度になるとぼうこう直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)が起こります。
ぼうこう直腸障害とは排尿や排便がうまく行えなくなることで、残尿や便秘などが起こりやすくなります。

脊柱管狭窄症は治るのか?治療法を紹介

脊柱管狭窄症を完治させるには、圧迫している組織を取り除く必要があるため手術が必要になります。
しかし、手術をしても組織をすべて取り除くことができないこともあり、症状がすべてなくなるとは限りません。
そのため、脊柱管狭窄症では、手術を行わない治療法が基本になってきます。
ほかの治療法を継続しても改善が見られない場合や、狭窄が重度の場合は手術適応になる場合があります。

●治療の基本は投薬とリハビリ!

脊柱管狭窄症の治療の基本は投薬と注射、そしてリハビリになります。
それぞれどのような治療が展開されるのかご紹介していきます。

1)投薬

薬は各症状に合わせたものが処方されます。
以下の表をご覧ください。

種類 内容
血管拡張血流改善薬 血流を改善する薬
非ステロイド抗炎症薬(NSAID) 普段からよく飲まれている抗炎症作用・鎮痛作用がある薬
神経障害性疼痛治療薬 「ビリビリ痛む」などといった神経性の痛みに効果のある薬

これらの薬を医師が状態に合わせて処方し、症状の緩和を図ります。
ガイドラインでは、この血管拡張血流改善薬が間欠性跛行やしびれなどの症状に有効であると報告されています。

2)リハビリ

ガイドラインでは、脊柱管狭窄症に対するストレッチが効果的だと報告されています。
脊柱管狭窄症は、腰の姿勢によって影響を受けやすく、腰椎が反り返る(前弯・ぜんわん)と症状がでやすくなります。
そのため筆者は腰椎の前弯(ぜんわん)に影響を与える筋肉のストレッチを中心に普段からリハビリを行っています。
そのほか、筋力低下を改善するための運動や、背骨に負担がかからないようにしていく運動を行っています。
※ストレッチや運動に関しては、下記の項で詳しく解説していきます。
筆者が勤務している病院に来院される脊柱管狭窄症の方は、投薬とリハビリで治療を行っていますが、実際に一度に歩ける歩行距離が伸びたり、足の痛みやしびれが軽減している方が多く、手術なしでも効果がでています。

●症状が重度の方は手術適応も...!

ぼうこう直腸障害や、著明な筋力低下が生じるなど症状が重度の場合は、圧迫されている神経が損傷してしまい、元に戻らない可能性がでてくるため手術が選択されます。
手術は除圧術と固定術の2つがあります。

除圧術 固定術
脊柱管が狭くなった原因である骨やじん帯を削って脊柱管を広くする手術 背骨が大きくずれていたりする場合にインプラントを挿入して固定する手術

以前、下肢に重度の筋力低下があり歩行困難の状態で除圧術を受けたあと、どうにか歩行車で歩くことが可能になった患者さんがいました。
下肢のしびれなどは残ってしまいましたが、手術の効果は大きかったです。
重度の脊柱管狭窄症でも、こうした手術によって状態が改善する方もいるので、医師から提案された場合は前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

自宅でできる対策!運動と日常生活のポイント

運動をしたからといって、狭くなった脊柱管が広がるわけではありません。
脊柱管狭窄症に対する運動の目的は、筋力トレーニングやストレッチにより狭くなっている部位に過度なストレスが加わらないようにすることです。

●背骨を支える筋力トレーニング

筋力トレーニングでは主に体幹の筋力を鍛えていきます。
自宅でできるトレーニングも多いので、ぜひ実践してみてください。

1)腹筋

あおむけで両膝を立て、肩甲骨が浮く程度まで上体を持ち上げることで腹筋の強化が行えます。
頭を浮かせるのではなく、肩甲骨を浮かせるように意識することがポイントです。

2)背筋

四つばいになり、右足左手、左足右手といったように、対をなす手と足を持ち上げて保持する運動を行うことで、背筋を鍛えることができます。
余力があれば、四つばいではなく、うつぶせの姿勢でやってみることもおすすめです。

●背骨に負担をかけないようにするためのストレッチ

腰椎の姿勢に影響を与える股関節周りの筋肉と、背中の筋肉のストレッチを行います。
背骨にかかる負担を抑えるためにも、次のストレッチは習慣化してみると良いでしょう。

1)股関節前面の筋(腸腰筋・ちょうようきん)

あおむけで片脚は伸ばしたまま、もう一方の足を曲げて抱え込むようにすることで、股関節の前部分がストレッチできます。

2)太もも後面の筋肉(ハムストリングス)

あおむけで片足は伸ばしたまま、もう一方の足を持ち上げます。
太ももの裏を持ち、その位置からひざを伸ばしていくと、太ももの裏の筋肉がストレッチされます。

3)背中の筋肉(脊柱起立筋)

あおむけで両足を抱え込み、腰から背中にかけてのストレッチを行います。

ストレッチは筋肉の伸びを感じながら、一度に30秒ほどを目安に実施してみてください。
ストレッチは毎日コツコツと継続することが大切なので、日課として決まった時間に取り組むのも良いでしょう。

●日常生活にも注意が必要!

普段の生活のなかでも、気をつけておきたいポイントがあります。
寝た状態から起きあがるとき、そのまま真っすぐ起き上がると腰に負担がかかるため、一度横向きに寝返りをしてから起き上がるようにしましょう。
また、料理をするときはなるべく腰に負担がかからないように、キッチンにイスを持ち込むなど、座ってできる方法を工夫してみてください。
もちろん重たい荷物を持つことなども、控えるようにしましょう。

●歩行補助具の活用も

歩くときに歩行補助具を使用していない方は、つえやシルバーカーの利用を考えてみてください。
脊柱管狭窄症の方からよく「スーパーの買い物カートを利用するといつまでも歩けそう」という話を聞きます。
これはカートを押すことで自然と体が丸くなり(後弯)、狭くなっている部位への負担を減らすことができるからです。
これに近い歩行補助具がシルバーカーなのです。
シルバーカーに抵抗がある方は、つえを使用するだけでもかなりの改善が期待できます。

まとめ

脊柱管狭窄症は、基本的には手術をしないで治療を進めていくことになります。
そのため、症状がでない動作の仕方を学ぶこと、自分でできる範囲でリハビリを行っていくことは、快適な日常生活を送るうえでとても重要になってきます。
今回取りあげた運動は、高齢の方でも比較的行いやすい運動になっています。
少しずつ運動を行っていき、症状をうまくコントロールしていきましょう。

参考:
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011 第1章 疫学・自然経過 CQ1 腰部脊柱管狭窄症とは何か(2018年2月20日引用)
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011 第3章 治療 CQ7 腰部脊柱管狭窄症における薬物療法の意義は何か(2018年2月20日引用)
腰部脊柱管狭窄症診療ガイドライン2011 第3章 治療 CQ8 腰部脊柱管狭窄症における理学療法または運動療法の意義は何か(2018年2月20日引用)

コメントをどうぞ

ご入力いただいた名前・コメント内容は弊社がコメント返信する際に公開されます。
また、個別の治療方針や転院に関するご相談にはお答えいたしかねます。ご了承ください。
メールアドレスが公開されることはありません。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)